「ペルソナ」という言葉を聞いたことはありますか?
ペルソナは、多様化した現代のユーザーのニーズに対応するための解決策として注目されているマーケティング用語です。このペルソナをうまく活用することによって、製品・サービスを届けたい層に届けることができる可能性が高くなるでしょう。今回は、マーケティングにおいて重要な「ペルソナ」について説明していきたいと思います。
ペルソナの意味とは
ペルソナとは、製品・サービスの典型的なユーザー像のことをいいます。
よくある20代男性・40代女性などの抽象的なユーザー像ではなく、あたかもその人が実在しているかのうな具体的な設定を持つユーザー像のことをペルソナといいます。
例えば、氏名・年齢・性別・居住地・家族構成・職業・年収などの基本的な事項から、趣味・価値観・ライフスタイルなどのプライベートな部分も詳細に設定し、ある1人の人間を設定します。
ペルソナとターゲットの違い
ペルソナと類似概念で「ターゲット」というものがあります。
ターゲットとは、先ほど出てきた「20代男性」「40代女性」などの年齢・性別・職業などで幅広くユーザーを捉えたものです。
ターゲットは、ペルソナに比べてユーザー像が抽象的で、ユーザーの設定が浅いという特徴を持ちます。
こちらは、幅広くユーザーを認識できるので、ユーザーの傾向や流行などを把握するときには効果的に使うことができます、
ペルソナ分析とは
マーケティングの手法として「ペルソナ分析」というペルソナを利用したものがあります。
ペルソナは製品・サービスのユーザー像を具体的に示したものです。このペルソナに売れない製品・サービスですと、ユーザーに利用してもらえる可能性は低いと考えることができるでしょう。
そのため、設定したペルソナに売れるようにマーケティングをしていく手法のことを「ペルソナ分析」といいます。
ペルソナ分析をする目的
ペルソナ分析をすることには、主に3つの理由があります。
- 製品・サービスの質を上げる
- ニーズの多様化に対応
- 迅速な意思決定を行う
製品・サービスの質を上げる
ペルソナは、ユーザーの具体像でそれに合わせたマーケティングをすることができるため、ユーザーに沿った製品・サービスのアイデアを出すことができます。また、ユーザー像が具体的であるため、それに対するアイデアも具体的なものが出てきやすくなります。
その結果、ユーザー起点のマーケティングができるようになり、製品・サービスの質を上げることができるようになります。
ニーズの多様化に対応
これまでの顧客分析とペルソナ分析を比較すると、これまでの顧客分析は大量のデータから分析する手法をとっていました。
例えば、コンビニエンスストアでは、ポイントカード等を導入して、どのくらいの年齢の人が何時に何を買ったのかについて記録して、顧客の購買行動を理解しようとしていました。
この手法は、大量生産・大量消費社会において、同じものを欲しがる人たちを同じ集団として捉えても問題なく、その集団にあった製品・サービスの届け方を考えるには有効であるといえます。
しかし、社会が高度化した現代では、同じものを欲しがっていても、それぞれ求めるものが異なっていたり、完全に同じ集団と捉えることが難しくなってきました。
例えば、同じ電子レンジを欲しがっている人たちでも、以前では、電子レンジで、食品を温めることができるというニーズがほとんどでしたし、技術もそれぐらいしかできませんでした。
しかし、現在ではスチーム機能・オーブン機能が欲しい、パンが焼きたいなど様々なニーズがあります。
この現代の人たちを電子レンジが欲しい人と一括りにできるでしょうか。
一方で、ペルソナ分析は、集団を理解する方法ではなく、ある顧客1人に焦点を当てるものです。
従来のコンビニエンスストアで集めているような基本的事項に加えて、その人の価値観や人生の目標、好み、習慣などのその人独自のものについて深く理解することで、その人の購買行動を理解しようとする方法になります。
そうすることによって、その人に似た人たちがその製品・サービスを利用するようになります。これは、多様化した現代のニーズに対して真の同様のニーズを持つ集団を見つけることができるようになるのです。
従来の方法では、気づくことができなかった細かなニーズまで理解することができるようになるのがペルソナ分析なのです。
迅速な意思決定を行う
ターゲット設定が曖昧だと、認識のズレが生じてしまい、新しいアイデアが正しいのか間違っているのかいちいち議論しなければなりません。
しかし、ペルソナを細部まで細かく設定し、プロジェクトメンバーの間で作成したペルソナを共有すれば、それが判断の軸となってくれるため、方向性のぶれを防いでくれます。それにより、スムーズに意思決定を進めることができます。
ペルソナの分析のメリット
ユーザー起点で考えることができる
ペルソナ分析のメリットとして最も重要なものは、「ユーザー起点で考えることができる」ということです。
先程述べた通り、製品・サービスを利用してほしいユーザーに沿ったものにすることもできますし、他にも広告やブランディングなどもユーザーに合わせたものにすることができます。
例えば、ペルソナのよく利用するSNSがTwitterなのかInstagramなのかFacebookなのかによって、広告の作り方も違いますし、届け方も異なります。
ユーザーが学生で通学中によくSNSを利用する時間が明確であるなら、その時間を中心に広告を打つということも考えられます。
このようにペルソナ分析をすることによって理想のユーザーに沿った行動を取ることができるようになります。
ユーザー視点で考える時に便利な4C分析というものがあります。
4C分析の詳しいやり方はコチラをご覧ください。
チームの共通言語になる
ペルソナを設定することで、プロジェクトに関わるすべての人との共通言語になり、ユーザー像が全員同じになります。
プロジェクトには、営業やデザイナー、製造など様々な人が携わります。
ユーザー像が20代男性という漠然なユーザー像ですと、メンバーそれぞれが自分の思う20代男性像を持つため議論の方向が定まらず、チームがバラバラな状態になってしまいます。
この状態を防ぐために、ペルソナの設定はとても有効です。ペルソナがあることによって、チームの20代男性像が共通になり、チーム全体が同じ方向を向いて製品・サービスについての議論ができるようになり、よりユーザーに沿った製品・サービスを作り出すことができるのです。
ペルソナ分析のやり方
これまではペルソナ分析の必要性について説明してきました。
それでは、実際にペルソナを作るにはどうするのかについて説明していきます。
ペルソナの項目
ペルソナを設定するときの項目は多ければ多いほど、そのペルソナが具体的になるのでいいのですが、最低限以下の項目を設定するようにしましょう。
- 年齢
- 性別
- 職業
- 家族構成
- 経済的状況(年収・資産・可処分所得など)
- 婚姻の有無
- 社会的地位
- 学歴
- 居住地
- 通信手段(よく使うSNSや情報収集源など)
- 趣味
- ライフスタイル
これらの情報に加えて、製品・サービスならではの項目も設定するとより具体的になると思います。例えば、ファッションなら読んでいる雑誌や、アプリケーション事業ならどのようなアプリをスマートフォンにインストールしているかなどです。
ペルソナ分析の手順
①ユーザーの情報を集める
まず、ペルソナを作成するのに必要な情報を集めます。その際に、製品・サービスの狙いたいターゲット(20代男性、40代主婦など)を大まかに決めておきます。
そして、そのターゲットの情報を集めていきます。
ターゲットの情報収集には、既に公開されているデータや社内にある顧客データなどの定量的なものから、インタビューなどで得た定性的なデータを活用します。また、知りたい情報がない場合は自分たちで調べる必要もあるでしょう。
②集めた情報を使ってペルソナを作成する
集めた情報を整理し、グルーピングを行いましょう。上記のペルソナの項目に沿ってグループ分けしていってもいいかもしれません。
このような情報のグルーピングをすることによってペルソナの人間像が見えてくるでしょう。
またグルーピングの際にはKJ法という方法がおすすめです。
KJ法の詳しいやり方はコチラの記事をご覧ください
アイデアの出し方のリンクを貼る
③ペルソナを設定する
グルーピングした情報をもとにペルソナを設定していきます。
上記の項目から、普段そのペルソナがどのような生活をしているのかについてストーリ仕立てで作っていきましょう。
このように基本的な項目に加えて、その人の普段の生活を文章化することによって、その人柄がわかり、どのような行動をとるのか推測しやすくなります。
④ペルソナの検証
ペルソナを作ったは良いが、このペルソナがずれていた場合は的外れなアイデアが出てきてしまいます。そのため、作成したペルソナを検証する必要があります。
このペルソナを検証するためには、実際にユーザーとの関わりが近い人たちにこのペルソナを見てもらいフィードバックをもらうことが効果的でしょう。
このフィードバック等をもとにペルソナが適したものでなかったなら、修正して、新しいペルソナを作りましょう。
ペルソナ分析の注意点
ペルソナの作成方法について説明してきましたが、ペルソナの作成の際の注意点について説明したいと思います。
①偏見・先入観にとらわれない
ペルソナを作成するときによく起こりがちなことは、自分たちの都合の良いペルソナを作り出してしまうということです。データを無視して、ユーザーはこうあって欲しいなどの希望や感情をもとにペルソナを作ってしまうと、実際のユーザー像とはかけ離れたものになってしまいます。
大袈裟にいうと、自社製品と他に競合製品があるとします。
データ上では、ユーザーはどちらの製品を50%の確率で選択するというものがあったとしても、ペルソナ制作者の希望や感情をもとにペルソナを作るとペルソナは100%の確率で自社製品を選択するというペルソナを作ってしまう。
上記の例は極端かもしれませんが、ここで注目してほしいことは「データをもとにペルソナを作る」ということです。
客観的なデータをもとにペルソナを作成することで、制作者の希望や感情などを反映してしまう危険性をグッと低くすることができるのです。
また、少数ではなく多くの人にペルソナ作成に携わってもらうことでも、偏りのあるペルソナを作成してしまう危険性が低くなるでしょう。
②情報コレクターにならない
ペルソナを作成する際にデータを用いる必要があります。しかし、なんでもすべて情報を集めれば良いというものでもありません。
機械であれば、収集した大量のデータを適切に処理することができるかもしれませんが、人間が大量のデータを適切に処理するには限度があります。
そのため、ペルソナ作成の際には、前もってどのような情報が必要なのかについてあたりをつけておく必要があるでしょう。
③ペルソナをアップデートする
ペルソナは、そのときのユーザー像を具体的に示したものです。そのため、時代、つまりユーザーの取り巻く環境が変化するとペルソナも変更する必要が出てきます。
例えば、50年前のユーザーを示すペルソナに、よく使用するSNSという項目はそもそもないですが、現代のペルソナにはほぼ必須となっています。
このようにユーザーの環境によってペルソナをその都度変更していく必要があります。
まとめ
今回は、ペルソナ分析について説明してきました。
ペルソナ分析は、高度化した現代社会での、多様化したユーザーのニーズに対応するために必要性が重視されています。
ペルソナを設定した後の分析を進めていくのに相性のいいフレームワークに「カスタマージャーニーマップ」というものがあります。
カスタマージャーニーマップの詳しい説明はコチラの記事をご覧ください
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